自動巻きのタグ・ホイヤーという選択

高級時計といえば、ロレックスなどに代表されるように機械式というのが、当たり前になっています。タグ・ホイヤーは、機械式とクオーツの両方のムーブメントを時計によって使い分ける、高級時計メーカーとしては珍しい会社です。タグ・ホイヤーは、高級時計の側面がありますが、その歴史は、スポーツウォッチと共に歩んできました。1920年のアントワープ・オリンピックの公式時計に選ばれたことから始まり、タグ・ホイヤー・マキシ・ヨット・ワールドカップも1990年に開催するまでになっています。タグ・ホイヤーが、高級時計メーカーでありながら、機械式とクオーツの両方のムーブメントを持っている答えがここにあると思います。つまり、伝統的、機械式時計よりクオーツのほうが制度が高く、コンマ何秒を正確に計測することを要求されるスポーツウォッチにおいてクオーツムーブメントを持つのはタグ・ホイヤーにとっては当然の答えだったのだといえます。

では、スポーツウォッチと共に成長してきたタグ・ホイヤーが機械式時計を持つのは意味があるのでしょうか。

高級時計がなぜ伝統的な機械式時計なのか。クオーツ時計が、電気を回路に流して時を刻むのと違って、機械式時計は、ゼンマイを動力源としています。クオーツ時計の回路は正確に時間を刻むのには適していますが、その電気回路には寿命があり、一般的には10年程度で使えなくなると言われています。これに対して、機械式時計は約3年ごとのオーバーホールが必要になりますが、適正にメンテナンスしていれば、何十年と寿命を延ばすことが可能です。つまり、愛用の時計を自分の息子に、または孫に譲るようなことも可能になります。このように機械式時計には、ただの一本の消耗品の時計というよりも、その一本の時計は、思い出の詰まったロマンといった方が的確でしょう。

このようにタグ・ホイヤーという時計メーカーは、スポーツウォッチと高級時計を両立している世界でも稀有な時計メーカーだといえます。